山狩り

昨日のことだった。

午後、課長から、携帯に℡が入る。

“行方不明者の捜索がある。朝、定時に作業服で出勤するように。各課2名参加ということだから、俺と係長(←ボクのこと)で出るほかないから。”

やれやれ・・・

確かに、今の職場で男性職員は課長とボクだけしかいない。

行方不明者の捜索は、俗に”山狩り”という。テレビニュースとかでおなじみの、山ん中に、棒とか持ってきいって、しらみつぶしに探すアレだ。

というわけで、今日は、朝からその捜索に出動した。

集合場所に集まったのは、100人ほど。警察、消防、消防団、そして市役所。

警察署長や消防長のあいさつ、家族のあいさつの後、捜索の説明が担当課長から行われる。その中で、お昼の食事が、ご家族から出されますというのがあった。

“こういう捜索の経費は、家族が負担するって聞いてたけど、ホントなんだ”

なんてこと思った。

それから、行方不明になってから〇日間が経過してる。最悪のケースも想定して捜索に当たるようにとの説明もあった。”遺体を発見するのは嫌だなぁ・・・”なんて考えも脳裏をかすめる。

棒と飲み物が支給され捜索が始まる。

支給された棒で、藪をかきわけかきわけ、進んだ。

今日は暑かった。。。

警察官や消防署員ならともかく、こちらは、役所の職員。体がなまりきってる。正直、しんどい。。。

藪の中、山林の中、側溝、水路、廃屋。そんな所を中心に探す。

そのうち、疲れてくるせいか、行方不明者を探すというよりは、ひたすら藪ん中を行くのが目的になったかのように歩く。

歩く。

歩く。。

歩く。。。

どれぐらい歩いただろう？

リーダーがお昼にしようと号令をかけた。

やれやれ、ようやく一息つける。

もう、この頃には汗だくだった。リーダーが本部と携帯で連絡をとり、お弁当を持ってきてもらえるよう話をつけてくれた。

お弁当は、ホカ弁の、”のり弁”だった。

すると、近くに座っていた若い職員がつぶやく。

“もう少し、いい弁当、出ないのかなぁ”

ボクは、

“朝の説明でも言ってたとおり、このお弁当は、ご家族が負担してるんだよ。米の一粒一粒、かみしめて、ありがたく食え！”

と言っていた。

配給された弁当を食べながら、もし今日も見つからなかったら、今夜も家族は、眠れない夜を過ごすんだろうか、なんて事を考えてた。

弁当は、ものの5分で食べ終わった(それぐらい、量的には少なかったのだ)。

人間、お腹が膨れると眠くなるものだ。

木陰のベンチに横になって仮眠をとった。

1時近く、目が覚めると、リーダーは、本部から待機指示が出てるから、もう少し休んでていいぞと言った。

1時10分。

リーダーの携帯に連絡が入る。

行方不明者が、無事、保護されたらしい。

全員、本部に帰って、山狩りが終わった。

しかし、体に、こたえた。。。

今日は、甘いもんでも食べよう。